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廃校寸前だった離島の高校に、日本中から生徒が集まる理由・・・公立高校の弱みを強みに変えるパワーを生み出すには?
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    2018.10.17 Wednesday 廃校寸前だった離島の高校に、日本中から生徒が集まる理由 sted by ARUJI 廃校寸前だった離島の高校に、日本中から生徒が集まる理由 島根県立隠岐島前高校。今や全国から生徒が集まる人気校だ  少子化が急速に進むなか、全国各地で学校の統廃合が進んでいる。文部科学省の調査によると、2002年度〜15年度までの間に全国で6811校が廃校になるなど、年間で約500校が廃校になっているペースだ。特に深刻なのが、離島や中山間地域(山間地およびその周辺の地域)の学校だろう。  そんななか、廃校の危機にありながら、たった8年で全生徒数が2倍へと増加した離島の学校がある。それが島根県立隠岐島前高校だ。  同校は地元の生徒がほぼ全員入学できることから、合格基準偏差値が38(「みんなの高校情報」より)と決して高いとはいえない。ところが、県外から来る生徒の入試倍率に関しては2倍程度と、今や全国から志願者が集まる人気校の1つになっている。なぜ離島にある島根の県立高校が、全国から生徒の集まる人気校になったのだろうか。 生徒数は8年で89人から180人に 島外出身者の入試倍率は約2倍と人気校へ  島前高校は、日本海に浮かぶ隠岐諸島の1つ「中ノ島」の海士町にある。境港からだと船で3時間半(高速船なら1時間50分)かかる場所だ。  現在は、生徒数の増加もあり活性化している島前高校だが、もちろん以前は全国の離島や中山間地域と同様に、廃校の危機に陥っていた。1989年には246人もいた島前高校の生徒数も、2008年には89名にまで減少していたほどだった。  ところが、2016年には生徒数が180人にまで回復。一時期は1学年1クラスだったものの、現在では1学年2クラスに増加している。それを支えているのが、全国から集まる島外出身の生徒だ。島前高校では、島前地域出身者(海士町、西ノ島町、知夫村)が半数を占めるものの、40%程度は推薦入試によって島外出身者を募集。2016年時点では、全校生徒180人中86人が島外出身者で、最近では海外の日本人学校やインターナショナルスクール出身者もいるという。  このように島前高校が島外の生徒を募集し始めたのは、島で深刻化していた「高校がなくなること」への危機感からだった。 廃校寸前だった離島の高校に、日本中から生徒が集まる理由 島前高校のある島根県海士町。ほんの数年前まで、地元の子どもたちですら島外の高校への進学を考えるほどの状況に陥っていたという 「以前は、島前地域の出身にもかかわらず、島前高校を避けて島外の高校に進学する子もいるほどの状況で、生徒の減少は深刻化していました。ただ、もし高校が島からなくなれば、進学を希望する全ての子どもたちは15歳で島を出て、島外の高校に行かなければならなくなる。そんな多感な時期に離れれば、島への愛着や『いつかこの地域に戻りたい』という気持ちは薄れます。  将来のUターン率が低下すれば、人口減はますます深刻化するだけ。高校を失う文化的・経済的損失は計り知れない。そこで、海士町が主体になって、島前高校改革を始めたのです」  こう語るのは、元リクルートキャリア社長で、現在は学校を核とした地域創生を行う「地域・教育魅力化プラットフォーム」の代表理事を務める水谷智之さん。水谷さんは、2016年からは海士町の魅力化プロデューサーも務めている。  島前高校の改革の中心人物となったのは、現在、島根県教育魅力化特命官を務め、水谷さんと一緒に地域・教育魅力化プラットフォームの共同代表でもある岩本悠さんだ。岩本さんは2006年から海士町に移り住み、その後、島前高校ではコーディネーターとして高校改革を行ってきた。  ここ数年、「(島外出身者を募集する)推薦入試の倍率は1.5〜2倍程度」(岩本さん)と、生徒数が激減していた高校としてはあり得ないほどの倍率になり、島前高校の人気は高まるばかりだが、その背景には岩本さんたちが行ってきた様々な「魅力的な施策」があった。 生徒が集まる3つの魅力 離島なのに専用の“公立の塾”まで完備  離島の高校が魅力的に映っても、大学進学を見据えると、なかなか踏ん切りがつかない生徒やその家族は少なくないだろう。実際、海士町を含む島前地域(そのほか西ノ島町、知夫村を含む)には高校が1つしかないため、高校内での学力差が大きくなり、高校の教員数が減るなかで、多岐にわたる進路希望や学習指導を行うのは実質的に難しい状況にあった。 廃校寸前だった離島の高校に、日本中から生徒が集まる理由 内外の政治や経済、産業、社会問題に及ぶ幅広いテーマを斬新な視点で分析する、取材レポートおよび識者・専門家による特別寄稿。 バックナンバー一覧 隠岐國学習センター。「教科指導」のほか、「夢ゼミ」という対話や実践形式で、自分の興味や夢を明確にしていくカリキュラムもある  そこで海士町が設立したのが、「隠岐國学習センター」だ。これはいわば“公立の塾・寺子屋”で、高校の授業や部活が終わった7時頃になると、多くの生徒はそのまま学習センターへと向かう。月謝は1・2年生で月額1万円、3年生で1万2000円。3学年合わせて約130人の高校生が通っている。  ここにいるのは東京などの都会から呼び寄せた優秀な講師陣で、生徒たちの進学に向けたサポートを行ってくれる。学校では授業形式だが、学習センターでは一人ひとりが学習目標を立て、学びのPDCAを回していく仕組み。つまり、自分の目標に合わせて学習の計画を立てて実践し、振り返って次の計画に生かすという一連の流れが主体的に行えるようになる。自立学習ができるようになるうえ、自分にあった学習を進めていける点は大学受験を考える生徒にとっても安心だろう。  こうした「教科指導」のほかに、「夢ゼミ」という対話や実践形式で、自分の興味や夢を明確にしていくカリキュラムも魅力の1つだ。1・2年生では月1回、多様なゲストを迎えて地域の課題の解決を考えるゼミに参加でき、3年生になると週1回、自分で設定したテーマについて発表したり、実践を通して探究したりする場に参加できる。これらは進路実現の礎にもなっている。  また、島前高校は約半数が島外出身の生徒のため、彼らは「寮生活」を行っているのだが、この寮生活も島前高校の魅力だ。 島前高校の寮では生徒たちで清掃などを行うことはもちろん、反省会を開いて運営を改善することもある  島前高校の寮は、大部分が生徒たちの自主性によって運営されている。例えば、お金の使い方や備品の買い方といった生活面から、地域住民を招いたのみの市の企画、野菜の栽培まで全て生徒が自主的に行う。トラブルが起きたとしても、毎日生徒たち自身で反省会を開きながら運営を改善するなど、自主性を育める環境がある。もちろんハウスマスターという、生徒の主体性を盛り上げつつサポートするスタッフも配置しているから、生徒を海士町に送りだしている家族も安心だろう。  もう1つ大きな魅力となっているのが、「修学旅行」だろう。島前高校では、修学旅行を海外研修と呼び、2年生の秋にシンガポールへ向かう。シンガポール大学の学生に対し、島前で行ってきた様々な魅力化プロジェクトを発表して、アイデアをもらうなどグループディスカッションを行うのだという。そのほか、希望者はブータンやロシアに行く「グローバル探究」というプロジェクトもあるというが、なぜ離島の高校生を海外で研修させるのだろうか。 廃校寸前だった離島の高校に、日本中から生徒が集まる理由 シンガポールへの修学旅行も、生徒たちを「グローカル人材」へと育てる重要なプログラムだ 「“グローカル人材”を育成するという教育目標のもと、グローバルの視野を持ちながら、離島のような課題が山積する場所で、足元から行動を変えていけるような生徒を育てたいと考えています。また、島外でも国内ではなく、国外に出ることによって『この地域はどういうところなのか』をより知ることができます。そういう点からも、シンガポールでの研修には大きな意味があります。  実際、生徒たちは海外でも自分の話が通じ、問題意識が共通していたことに自信を持って帰ってきますし、より地域に対する誇りや興味関心が湧いたりするなど、効果はとても大きいですね」(岩本さん) 当初は「よそ者」扱いで猛反発も 小さな成功体験の積み重ねで改革を推進  今やこうした島前高校の魅力が「協働性、課題発見能力、解決能力、人間性」といった能力を身につけさせたい生徒やその保護者に人気となっている。しかし、これらの様々な施策は最初から決して順調に進んだわけではなかった。  隠岐島前高校は、県立の高校だ。そのため、多くの教諭が島外から来て、赴任期間が終われば数年で帰ってしまうという状況があった。生徒数が減少する一方で、高校の存続に正面から危機感を持ち、自分事として本気で動いてくれることは期待しづらい風潮もあったという。そこで白羽の矢が立ったのが、当時ソニーで人材育成に携わっていた岩本さんたち。海士町主催の「人間力推進プロジェクト」の出前授業に呼ばれたことがきっかけだった。 島前高校の改革を行ってきた岩本悠さん 「海士町は、小さいけれど日本が抱える様々な課題の最先端を行く場所です。ここでの学校教育、人づくりは全国に広がって波及するモデルになると感じていました」(岩本さん)  元々人づくりを通しての社会づくりに興味があった岩本さんは、町の将来へ強い危機感を抱いていた町長などからの強い要望もあり、2006年から海士町に移住して島前高校の存続に向けて動き出したが、当時はやはり「よそ者」として猛反発を受けたという。  島根県出身でもなく、教員でもない、そして東京で働いていた頃なら当たり前の「ファシリテーション」や「リノベーション」のような横文字を使う岩本さんへの反発は強く、それに対して岩本さんは飲みの場や視察と称した旅行などでの交流を通して、関係性を築いていった。 廃校寸前だった離島の高校に、日本中から生徒が集まる理由 「学校と地域の共通したビジョンづくりでは、地域資源を生かす学びを入れ、全国から越境留学する生徒を募集して多様性を学校に創出しようとしましたが、見たこともない取り組みに不安や抵抗感が出ました。訳ありの生徒が来るんじゃないかという反発もありました。でも、生徒が地域の観光プランを考える“観光甲子園”で文部科学大臣賞を受賞するなどの成功体験を積み重ねていくことで、学校も変わっていけたと考えています」(岩本さん) 全国に「島前高校」のような 地域と学校が協働する取り組みは広がるか  国や県ではなく、地域が主体となって高校を拠点に改革するという取り組みは、現在、全国各地にも広がっている。  例えば、北海道南西部の日本海に浮かぶ奥尻島にある北海道奥尻高校は、2016年度より道立から町立の高校となり、島全体を学び舎と考えた様々なカリキュラムを実施している。遠征費などに課題を抱えていた部活については、クラウドファンディングを実施し、交流試合の遠征費を捻出したり、新たにマーケティングを中心とした活動を行う「マーケティング部(仮称)」を設立したりするなど、機動的な活動を行う。  地域・教育魅力化プラットフォームでは、全国から生徒を募集している公立高校向けの留学支援事業である「地域みらい留学」を2018年から立ち上げたが、島前高校や奥尻高校のような成功は「奇跡だ」という声も少なくない。それを奇跡にしないためには、どのようなポイントが重要になってくるのか。 島前高校では、シンガポールへの修学旅行だけでなく、希望する生徒はブータンへの研修旅行に参加することもできる 「1つは、学校が地域や社会に開かれていて、協働のチームがあること。あるいはコーディネーティブに動く人たちがいる体制があること。  2つ目は、地域課題も教育資源として捉え、高校生がまちづくりや地域を舞台にしたプロジェクトに挑戦していける学習環境を構築していることでしょう。  そして3つ目は、ほかの学校や地域ともコラボレーションしていくことです。今、様々な学校や地域で取り組みが進化していますので、それらを相互に学びあうことで地域の魅力も高まっていきます。つまり、自分たちでゼロから考えることにこだわるのではなくほかを参考にすることも大切ですし、ほかを知ることで自分たちの地域の魅力に気づくこともできます」(岩本さん)  現在、廃校の危機にある学校に関しては“名物校長”のような存在を据えるような対策も考えられるが、それだけでは解決できないほど問題は深刻化している。地域が主体的に動いて地元の学校を改革できる体制づくり、そして短期的ではなく長期的な視野で地域の発展を考えられる人材を呼び込む土壌が、島前高校のようなモデルが広がっていくための前提条件になるのではないだろうか。 (ダイヤモンド・オンライン編集部 林恭子)
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